設計者インタビュー


text/ 春口 治彦(ひかり生活デザイン)

パティオを囲むようなロの字型の建物。ショップやSOHO、レジデンスが混在する都市型集合住宅[THE LINDOS]。
本日は、当物件の現場事務所にお邪魔して、こちらを設計した一級建築士事務所[住工房」の代表 戸上さんにお話をお伺いしました。

■1000坪以上の敷地に建つビルの計画、どのようなことを考えて設計しましたか?


「駅からすぐの角地、すっきりと整備された千早地区、そしてこの規模なので、
まずは街並み・景観を大切に考えました。外観は同じ通りに建つ、こちらも以前設計したビルなんですが「リングローブ」というマンションのデザインイメージを踏襲し、
統一感を持たせました。また容積率的に余裕を持たせてあり、ゆったりとした構成になっています。 基本構想だけで3ヶ月弱...結局、トータルで設計に約10ヶ月もかかりました」

■通常、事業用の物件だったら設計期間は3ヶ月くらいかと思いますが、このスケールだから10ヶ月もかかったのですか?

「はい、それもいえますが、こんなに時間がかかった1番の理由は、プロデューサーである事業主が事業としてだけでなく住宅づくりそのものに物凄くこだわりを持っているからなんです。数えきれないくらいのディスカッションを重ねた結果、気が付けば10ヶ月もかかってしまったというわけ。
もうかれこれこちらの事業主とは分譲・賃貸をあわせてマンションは6棟、戸建住宅は20棟以上仕事をさせてもらっているけど、毎回こんな感じで...最近はさらに拍車がかかってきて、ちょっと趣味の領域に入ってきたような気が...事業としてはどうかなと思うときも(笑)」

■ロの字型の建物にした理由は?

「縦2列や横2列など、様々なプランを検証しながら構造的な合理性を追求していった結果、ロの字型になりました。
ロの字に落ち着いた後も、建物の位置は南から北側へと敷地内でちょっとずつ移動していったんですよ(笑)
また、最終的にエレベーターは東西のエントランスに1基ずつ設置するようになったんですが、途中、パティオの真ん中に配置して各階へは4方にブリッジで渡っていくようなプランも検討しました。計画を進めていくうちに没になりましたが...
あと、ロの字にすることで、人の気配を感じさせるという効果が得られるとも考えました。
現代では、特にマンションでは昔の長屋であったような近所付き合いはほとんど見られなくなったでしょ」

■そういう狙いで3階にパティオを設けたんですね?


「それもあります。ここで住民同士井戸端会議でもやってくれたりしたら嬉しいですね。
あとは景色として楽しんでいただきたいと考えました。このパティオは25メートルプール2つ分の大きさがあって、水や緑を配します。マンションの中央に潤いのあるプライベート公園があるようなイメージ。
そして3階の各室に関してはSOHO対応のプランにし、パティオに向かって開かれた大きな土間スペースを設けました。ここからの眺めがきっといいと思います。ちなみに4階以上(住居区画)のパティオ側は、室内からの視線がぶつからないよう少し閉じた感じで共用通路に面するようにし、見晴らしの良い外部の4方向に向かって大きく開き採光をとっています」

■賃貸マンションとしてのこだわりを教えてください


「こだわりといえばスペックの高さですね。
各室のリビングや個室の床にはバンブーの無垢集成フローリングを採用しています。美しい上に適度な硬さがあって傷が付きにくいのでメンテナンスがとても楽。イニシャルコストはかかるものの、長きにわたって張替をしなくて良い為ランニングが抑えられるといったメリットも。賃貸マンションではなかなか使われることのないものですが、事業主と一緒に海外まで直接見に行き輸入しているので実現できました。タイルや石材、洗面化粧台もオリジナルです。また、駐車場とバスルームまわりの目隠しやデザインの一部として使用しているルーバーは木を練り込んだ樹脂製でこちらもオリジナル。ちなみに全部で長さ約10㎞分の量が今回の計画で使用されるんですよ。
あとは全戸に床暖房や浴室乾燥機を付けました。どちらもガス式なのでランニングがかからないし、なによりもよく効きます。また、浴室は2サイズあって、小さいほうでも14-18、大きいほうだと16-20を採用しています。これは分譲にも全く引けをとらないサイズ。窓にしても全てペアガラスを使用。線路に面する部分は更に遮音性の高いものを使用しています。 今回の建物は性能がとても高くCASBEE(建築環境総合性能評価システム)でAランクを取得しています。通常の賃貸住宅ではこのランクをなかなか取得しません。そういう意味では入居される方はとても快適な生活を送ることができると思いますよ。
まあ、これは完全に事業主のこだわりによるところが大きいのですが、抑えられるところはとことん抑えて、かけるところには勿体ぶらずにかけるといった感じでしょうか」

■最後に戸上さんおすすめのプランを教えてください。

「全プランがおすすめですが、あえて言うならAタイプです」

■他に130㎡オーバーのプランもあるのに、一番小さいAタイプ(37㎡)がおすすめとは意外ですが...

「小さくてもコンセプトが凝縮されているのです。石調タイル張りの通路やビルドインのエアコン、調光式ダウンライト、水まわりの配置など、ホテルのイメージでプランニングしています。キッチンは引き戸で隠せるようにしてあります。シャープで生活感を感じさせないデザインですが、ちゃんと使い勝手も考えてあるのでご心配なく(笑)」


お忙しい中、1時間以上もお付き合いいただきました。

語る口調はとても穏やかだけど、実に想いのこもったお話をお聞きすることが出来ました。
他にも色々とあるのですが、ちょっと長くなってしまうので、今回は以上とさせていただきます。

先日、公式サイトにテナント以外のプラン18タイプをアップしました。
なかなか見ごたえのあるバリエーション。間取り好きな方にはたまらない内容だと思います。

ぜひご覧ください→ THE LINDOS

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